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PICUのススメ

日本におけるPICUの設立は、1980年代から1990年代にかけて徐々に進められました。当初は限られた医療機関のみがPICUを有していましたが、小児医療の重要性が高まるにつれ、その数は増加していきました。
2013年の時点では全国に約250床程度しかありませんでしたが、2017年には28ユニット・280床、そして2023年にはおよそ300床以上に拡大しています。東大病院では2019年6月に新たなPICUが開設され、最新の医療機器と情報管理システムを導入しています。これにより、高度な小児集中治療を提供しています。
1. PICU入室症例の内訳
JIPADの2021年の報告によると、PICUに入室した小児症例は以下のような内訳となっています。
- 呼吸器系疾患(肺炎や喘息など):約31.2%
- 手術後(外科手術後の集中管理を要する症例):約22.9%
- 循環器系疾患(心臓血管外科術後を含む):約19.3%
- 代謝異常や血液疾患など:約12.1%
- 神経系疾患(けいれん重積や脳炎など):約7.7%
2. PICUの役割・予後の改善
一般的に小児病棟での急変率は約0.5〜2.0% (心停止などの重篤な事象は0.1~0.3%)と報告されています。日本集中治療医学会小児集中治療委員会が2017年度に行った調査によればPICUの年間入室症例数は10,941例、実死亡率の平均は1.6%と報告されています。
また海外の研究では、PICU病床数が多い地域では心停止後の神経学的予後が良好であることも示されており、PICUと子どもの予後の改善に直接的に結びついていることがわかります。
3. PICUのメリット・デメリット
私が研修医の頃は、人工呼吸器管理を要する症例であっても一般病棟で自ら治療にあたることも珍しくありませんでした。教科書を片手に恐る恐る呼吸器設定を変更したりしたものです。私自身の知識不足で治療期間が延長した症例もあったと思います。PICU病床数が増加した今では人工呼吸器はおろかHFNCであっても一般病棟で使用する機会は減少してきております。
このような治療の「分業化」には
1)各専門職のスキルを最大限活用できる。
2)効率的に重症管理が可能となる。
3)チームで対応することで24時間の医療体制を維持できる。
といったメリットもありますが、いくつかのデメリットも生じます。
4. 分業化の主な弊害
1. 診療責任者が不明瞭
チーム医療の中で「担当が複数」「当直明けで引き継がれる」など、主治医の不在感が出やすい。
情報が断片的になり、「症例の経過全体や家族背景」などの重要な情報が共有されにくい。
2. 若手医師の手技習得機会の喪失
PICUの患者は非常に重症で、「失敗が許されない」場面が多くあります。このような症例では気管挿管や中心静脈カテーテル挿入などの重要な手技は、ベテランの医師が確実に行うことが期待されます。教育よりも迅速で安全な対応が優先される結果、経験の少ない若手医師にはなかなか任せてもらえない状況が生まれます。このような状況が続くと、経験の浅い若手医師は手技を「見るだけ」で終わってしまい、経験が積めないままとなる一方で、経験豊富なベテラン医師がどんどん経験を積んでいくという、手技経験の二極化が生じることになり、小児科全体として考えた場合、将来的なスキル習得に影響を与えることが懸念されます。
5. 東京大学病院小児科・PICUの取り組み
東京大学病院小児科では専攻医の研修ローテーションのなかに1か月間のPICU研修が組み込まれています。初期研修医や小児科専攻医を対象に、PALSに基づいたシミュレーションを月2回実施し小児の救急対応能力を向上させています。また難易度や習得度に合わせて若手医師に手技を分担することにより上級医のもとであれば挿管やエコーガイドによるライン確保などの最低限の手技が可能な状態になるよう教育を行っております。もちろん、1か月間の研修では十分とはいえません。
希望があれば大学病院および関連病院での専攻医期間が終了したあとに1~2年程度PICUを再履修した後に、自分の興味のある分野の研究に進まれることも可能です。専門性を決めかねているが、小児科医としてどこでも働けるスキルを身に着けておきたい、といったニーズにもどんどん応えていきたいと考えていますので、興味のある先生方はぜひご連絡いただき我々の仲間になっていただきたいと思います。
見学・お問い合わせ
東京大学医学部附属病院のPICUでは、共に働く仲間を募集しています。
小児集中治療医学を実践する最先端の環境が整っています。
- 集中治療医を志している人
- 集中治療のエキスパートを目指している人
- 小児科の中でも専門性が見つからない人
- (事情により臨床から離れていたため)臨床の勘を取り戻したい人
見学に是非いらしてください!
よくあるご質問
東京大学PICUで働くためには東京大学小児科医局に入らないといけないのですか?
そんなことはありません。相談して一緒に働こうとなったら医局の所属関係なく働けます。医局のメリットは多くありますので、入りたいと思った時に入れます。
医局のメリットはなんですか?デメリットはなんですか?
メリットは多くの人々との繋がりが増えることと、大学院博士課程等のキャリアアップの選択肢が増えることでしょうか?デメリットは小児科内の細かい仕事はありますが、それほど多くはありません。「どこかに飛ばされる!」といった恐怖概念も実際にはありません。
東大PICUは敷居が高く感じるのですが・・・
働く環境は全く普通で、特別なことはありません。皆、コミュニケーションにたけ、良好なチーム医療を実践しています。大学・病院の組織が巨大なので、新しい人との関わりが多く、学生も含めた常に新しい人を受け入れる文化があります。
小児病院のPICUと比較して症例は偏っているのではないですか?
新しいPICUに移転するまでは先天性心疾患が中心の診療体制でしたが、集中治療専門医・専従医の体制整備によって、全ての疾患を受け入れる体制になりました。さらに救急かとの連携や心臓移植や外科系診療をみることができるので、小児病院より多彩な症例を経験することができます。
研究はしないといけないのですか?
はい。医師の仕事は医学を発展させる事なので、それぞれのペースでやらなければならない事です。好きとか嫌いとか、得意とか苦手とかの問題ではありません。多くの経験やサポートシステムが充実しているので、遠回りせずに科学の路を歩める環境です。
海外留学はできますか?
多くの人が海外留学を行なっているので、様々な経験・知識・人間関係が育める国際的な環境です。様々な留学の路を一緒に考えてゆけます。
東大PICUの目標はなんですか?
一緒に働いている仲間全員が、医療人としても、人としても素晴らしい人物になることです。その結果として素晴らしい臨床・研究・業績が達成できると信じています。
